◆書誌解題◆
31 『井伏鱒二選集』草案
書誌情報
【草稿】
縦書200字詰 B5判 無標記/縦書400字詰の半裁 B4判 無標記 全19枚
解題
 太宰は『井伏鱒二選集』全9巻(昭23~昭24、筑摩書房)のうち、第1巻(昭23・3)、第2巻(昭23・6)、第3巻(昭23・9)、第4巻(昭23・11)の「後記」の執筆を担当したが、そのもととなった草案と考えられる。
 大きく2つの系統があり、第1の系統は200字詰、無標記の原稿用紙に記された13枚。第1巻~第6巻の素案が記入され、第2の系統は400字詰の用紙を半裁したもので、6枚。第1巻~第4巻までの素案が記入されている。なお、抹消跡と、年月、雑誌のデータは鉛筆による書き込みである。第1の系統は『全集第10巻』(昭52・2)に収録され、第2の系統は、第1の系統の翻刻(抹消跡を含む)と共に、『全集13』(98・5)に初めて翻刻された。
 なお、草案にはこれらとは別に、第9巻までの構成を記したものの存在することが明らかになっている(石井耕「できるかぎりよき本 石井立の仕事と戦後の文学」前・後編(「北海学園大学学園論集」2010・9、12)、および同「太宰治と『井伏鱒二選集』―編集者・石井立と戦後文学―」(同誌2013・9))。石井立は同選集の筑摩の担当編集者であった。石井によれば、第一巻「後記」の執筆されたのが昭和22年の晩秋、第2~4巻「後記」が石井によって口述筆記されたのが、昭和23年4月7日と27日であったという。(安藤宏)