◆書誌解題◆
7 トカトントン
書誌情報
【原稿】
縦書400字詰 B4判 標記「東青21」 全35枚
和綴1冊 題箋は原稿題名のコピー。

【初出】
「群像」2巻1号(昭和22年1月1日)78-91頁  (太宰治文庫所蔵)
解題
推定執筆時期は、昭和21年8月末~11月上旬(山内祥史「解題」(『全集第八巻』90・8)参照)。疎開先の金木で書かれた最後の作品であると考えられる。
 参考までに解釈に関わる主な抹消跡を掲出しておく。
ノンブル5 L19〔無条件□降伏〕
ノンブル12 L17〔と小声でひとりごとを言つてみた、とたんに、れいのあの、□□〕
ノンブル16 L12〔福島〕
ノンブル19 L5〔四月の中頃、〕
ノンブル24 L10〔やつぱり噂どほり凄腕で、〕
ノンブル25 L7〔所□詮は、その指導者の、名誉慾か権勢慾の〕 L18〔美□男の秘書を殴り、〕〔秘書を蹴倒し、〕
ノンブル34 L4〔半分は、ウソです。〕
なお、末尾のマタイ伝の引用の箇所の欄外に、鉛筆で「○作者からのおねがひ。この辺の校正一字も違はぬやうよくよくご注意ください。」との注記がある。
 なお、初出誌掲載に際して重要な削除部分があるのであげておきたい。
ノンブル5~6「しかし、それは政治上の事だ。われわれ軍人は、あく迄も抗戦をつづけ、最後には皆ひとり残らず自決して、以て大君におわびを申し上げる。自分はもとよりそのつもりでゐるのだから、皆もその覚悟をして居れ。いいか。よし。」
ノンブル6「厳粛〔と〕は、あのやうな感じを言ふのでせうか。」
(安藤宏)