◆書誌解題◆
21 人間失格第1冊第2冊第3冊第4冊
書誌情報
【原稿】
縦書200字詰 B5判 標記「筑摩書房」 全412枚
和綴4冊 題箋は原稿題名のコピー、それぞれ「壹」「貮」「参」「四」の書き込み。
第1冊 ノンブル1~59
第2冊 ノンブル60~206
第3冊 ノンブル207~308
第4冊 ノンブル309~412

【草稿】
縦書200字詰 B5判 標記「筑摩書房」 全157枚

【初出】
「展望」30号(昭和23年6月1日)23-50頁(「はしがき」「第一の手記」「第二の手記」)、同31号(同7月1日)38-52頁(「第三の手記」の「一」)、同32号(同8月1日)35-49頁(「第三の手記」の「二」と「あとがき」)  (太宰治文庫所蔵)
解題
【原稿】
 昭和23年3月7日(あるいは10日)から31日まで熱海の宿(咲見町林ケ久保起雲閣別館)で「第一の手記」と「第二の手記」の合計206枚を執筆、次に4月2日~28日に三鷹市下連雀の仕事部屋で「第三の手記」の「一」102枚を執筆、さらに4月29日~5月10日に大宮市大門町の下宿で「第三の手記」の「二」92枚と「あとがき」12枚を執筆した(山内祥史「解題」(『全集第九巻』90・10)参照)。
 『全集13』(98・5)に、原稿の抹消跡も含めた翻刻が掲載されているので参照されたい。また、全原稿がカラー印刷されたものに『集英社新書ヴィジュアル版 直筆で読む「人間失格」』(08・11、集英社)がある。

【草稿】
 美知子夫人が保管していたもので、平成10年5月に公開され、同年7月号の「新潮(太宰治没後五十年)」特集号に紹介された。同年10月、『斜陽』『グッド・バイ』『如是我聞』の草稿と共に津島家から日本近代文学館に寄贈された。
 完成原稿と同じ用紙であること、ノンブルが完成原稿のそれと一致していることから、完成稿を書き継ぐ過程で派生した草稿であることがわかる。このうち65枚が熱海、42枚が三鷹、48枚が大宮執筆分に該当(ノンブル不明を除く)するので、異なる時期に3カ所で書かれたはずの原稿がほぼ等分に存在していることになる。
 裏にメモの書き込まれているものが21枚、表の余白にメモの書き込まれているものが11枚あり、小説の構想にかかわる重要な内容を含んでいることから、作者自身が草稿の何枚かを手許に置き、構想の書き込みに用いていたものと考えられる。
 なお、『グッド・バイ』(草稿)に、『人間失格』(草稿)に該当するものが2枚入っているので合わせて参照されたい。『グッド・バイ』草稿の画像5と画像7がそれで、ノンブルはないが『人間失格』350に該当するものと、『人間失格』のノンブル365の草稿である。また、『人間失格』(草稿)のノンブル363のウラ(画像152)にも『グッド・バイ』の下書きが記されており、この2作品の草稿が互いに密接な関係にあった事情をうかがわせる。
 この草稿は翻刻が『全集13』(98・5)に掲載されているので参照されたい。(安藤宏)