◆書誌解題◆
29 「惜別」の意図
書誌情報
【草稿】
縦書200字詰 B5判 標記「久楽堂 NO.101」  全11枚
解題
 日本文学報国会は大東亜共同宣言(昭和18年11月6日)を小説化する企画を立て、太宰が候補者の一人に選定された。昭和19年2月3日の協議会の決定を受け、10日頃までに執筆され、内閣情報局と日本文学報国会小説部会に提出された執筆計画書の下書きであると考えられる。1枚目欄外の「独立親和」「文化昂揚」はいずれも大東亜五大宣言の中の項目。ちなみに太宰に割り当てられたのは「独立親和」の項目であった。冒頭の抹消跡から、「清国留学生」→「支那の人」→「惜別」と題名が変化したことがわかる。
 生前未発表で、『全集第十二巻』(昭31・9)に初めて収録された。(安藤宏)