解題 資料36に同じく『新撰中等教育平面幾何学教科書』(宝文館 初版大正12年)の、第2編第6章146頁以降から第4編終りの208頁までに対応したノート。表紙に「Exercise Book in Geometry 幾何」とある。見開きにはやはり落書があるものの、途中までは余白にわずかに見えるだけで(画像15、29、30、31)、例題の解や定理が丁寧に記されている。しかし、授業ノートを切り替えたらしい(画像39)以降は落書多数。「津島君は実に美男子なり」「○○の話を聞くのはいやだ。うそをつかれてだまされるかも知れないから」(○部分は判読不明)など、後年の太宰文学を予感させる文句のほか、人名、人物イラストなど。裏表紙内側には「映画日輪」の文字とイラスト。映画『日輪』は、1925年10月末~1926年5月中旬までのわずか半年の間に、衣笠貞之助(横光利一原作)、鈴木大輔、村田実(ともに三上於菟吉原作)の3監督の作品が続けて公開されている。この書き込みは村田実監督作品(日活、1926年5月21日公開)をふまえたものと推定される。(山口徹)
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